骨が折れた。
木曜日、お客さん先の打ち合わせに参加していたら、別のお客さんから「あの見積ちょうだい今日中に」と電話がきた。夜まで打ち合わせの予定だったので「見積条件も未確定ですし明日AM中で・・・」と申したところ「じゃあ明日朝8時までに」ときた。幸い出席中の打ち合わせには先輩がいたので、その場は先輩に任せ、見積を作りに事務所に戻った。
お客さんの確信犯的な言動にイライラしていたのだとは思う。重たい見積だったので早く事務所に着きたかったのも確かだ。東京駅でホームから降りる階段を踏み外し、2回転半くらい、派手に転んだ。
前の人にぶつからないように、と避けたら、また変な体勢になってしまったらしく、数秒は微動だにできなかった。そこは山手線のホーム。あまりにも沢山の人が通り過ぎていくので、よたよたと倒れたままスカートを直した。痛いより何より、 「今日は見られても恥ずかしくない、適切なパンツで良かった」というのが最初に思ったことだった。ガーターストッキングだったのでパンツは丸見えだったはずだが、うっかり見られるのに適切なものだった。本当によかった。スカートが直って安心したのか、傍観していた周囲のおじさま方がバッグから散乱したものを拾ってくれた。よたよたと受け取り、足が痛くて靴は脱いだまま、そろりと改札にむかった。
靴を抱え、はだしで壁伝いに歩くと、何人かのおばさまやおじさまが「足が悪いの?大丈夫?」と声をかけてくれた。引きつった笑顔で大丈夫と答え、息を止めて靴を履き、会社にもどった。会社は東京駅からすぐなのだけれど、この50m程が地獄だった。石畳の段差さえも激痛だった。
事務所に戻ってからも、動きがおかしい私に色々なひとが構ってくれた。本当に痛いので構わないでほしかった。おろおろと23時くらいまで残業をし、タクシーで帰ればいいものをケチり、よたよたと地下鉄で帰ってきた。最寄り駅では、外人さんが誘導をしてくれた。駅から牛歩で家に向かっていたら、ニヤニヤした旦那さまが「タバコを買うついでです」と迎えにきてくれていた。
どうにも普通ではない痛みなので、翌日、自宅近くの整形外科に行った。靭帯を痛めたのかなぁと思っていたら、足の甲の骨が折れていた。骨折。骨折なんて、小学生の頃、車のドアに指を挟めて以来だ。あれの方が痛かったなぁとレントゲン写真を見ながら思った。ギブスはお風呂に入れなくなりそうだし、ストッキングも履けなくなるので、湿布に包帯で済ませてもらった。松葉杖を貸し出された。看護婦さんが使い方をレクチャーしてくれたが、私は運動神経が悪いので、上手く使えなかった。仕方ないので、待合室には松葉杖を持って戻った。
松葉杖というのはスゴイ。持っているだけで、病人認定されてしまう魔法の道具みたいだ。さっきまで「若いのに・・・」という目で見ていたおばあさま方が、急に親切に席を空けてくれた。薬局でもお席で会計だった。申し訳なくて、せめて松葉杖をちゃんと使おうと思った。その足で会社に向かったのだが、電車の中でも席を譲られそうになった。普段は譲る側なので、慣れなくて「ありがとうござます!でも大丈夫なのでどうぞ」と答えたら、譲ろうとしてくれた青年の笑顔が曇った。そうだよね。せっかく勇気をだして声をかけてくれたのだから、素直に座ってあげるのが正解だった。とても悪いことをしたと、立ちっぱなしで確かに痛い足を見つめながら思った。と同時に、使いずらい割には周囲に影響力がありすぎる松葉杖が憎かった。
会社でも会う人会う人に「どうしたの?」と聞かれる。うんざりだった。人が少ない日だったのだか、それでもこうである。これで人が多くて部課長がいる日だったら、居心地が悪くて仕方ないだろう。幸い数日で松葉杖なしで歩けそうだったので、上長に相談をして、松葉杖離れまで数日は自宅勤務とし、とっとと家に帰った
長ったらしい日記になった。2行で纏まる気がする。骨折った。イライラして歩くと転ぶ。松葉杖は嫌だ。怪我をしても旦那が家事をしてくれる訳ではない。まだ長距離は歩けない。こんなところだ。
新年早々縁起が悪い。そういえば、今年の初夢は和田アキ子に遅刻を怒られる夢だった。どうか今年が平穏に過ぎますように・・・。